TANNOY HPDについて、その4

今回からHPDの実際のメンテナンスの紹介をしたいと思います。

準備するものは次の物ですが、まず言える事は決して急いで作業をしない。

2〜3日位では無理で、1ヶ月はかけたいところです。

 

100円ショップなどで売られている直径30Cm程の回転台、コンパス、ボール紙、切れ味鋭いハサミ、マイナスドライバー、インチネジスパナ(ダンパー外し用)、透明ゴム系接着剤、サンドペーパー、シルバー色塗料ミニ缶、1Cm幅刷毛、そして素材となる牛革のシート等です。素材は、今はどうか知りませんが、昔、秋葉原ホコ天大通りに革布専門店があり、そこで入手しました。

 

作業は大きく分けて、

1)エッジの型紙の作成、素材の裁断

2)コーンへのエッジの接合(少し難しい)

3)ホーンの錆取り

4)完全に接着完了したコーンアッセンブリーの、本体への取付

5)コーンの芯出し(これがかなり難しい)

6)最終組立

の順になります。

次回から、上記の項目別に説明いたします。

TANNOY HPDについて、その3

TANNOYのHPDが総分解、再組立が出来る事は、多くの人がご存知です。

HPD愛好家は、たいてい1組どころか2〜3組スペアにお持ちであると思います。

 

従って、エッジ交換はネットを検索するとたくさん出てきます。

しかし、純正のエッジだけの販売は日本代理店のTEACでも扱っていません。

昔ならば、純正コーンアッセンブリーで1個21500円で販売されていた記憶があります。

 

現在はファンテックとか言うエッジ専門店で代用品が売られています。

発泡ウレタン製のエッジの寿命は20年が限界です。(但しHPDでもHPD295Aだけはゴム製エッジで状態の良い物がたくさんありますが、エッジ以外の部分でやはり劣化がありますので、メンテナンスは欠かせません。)

 

ですから、HPD愛好家はたぶんいろいろと工夫されているのでしょう。

 

実は私もその一人です。

私のHPDは、20年程(正確には26年)前に思い切って自然素材の牛革にしました。


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これが完成した画像です。

素材は念のために、2台分作りました。


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これが、薄い牛革で裁断したものです。

ちなみにユニットの裏側からの画像がこんな感じです。


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このエッジは、もうゆうに25年以上経過していますが、変質どころかうまく馴染みベストコンディションです。

次回は、その作り方を紹介いたします。

TANNOY HPDについて、その2

話が前後しましたが、TANNOYスピーカーのメンテナンスと言えば、まずエッジの交換があげられます。

何をするにも、まずウーハーのコーン紙をフレームから外す事になり、その時ウレタンエッジは破れてしまいます。

時々、ウーハーのセンターキャップまで破り外しする方がいらっしゃいますが、これはまったく必要ありません。

 

HPDタンノイの場合、ウーハーコーンを外すには、本体の背中を向け、まずボイスコイル引出し線をハンダコテで端子から外す事になります。

次に、12個のエッジ押さえ金属板(昔から矢紙と言われている)を止めているマイナスネジすべてを外します。

そしてボイスコイルを支えている、ダンパーを押えているリング状の金具のナットを全部外すと、コーンは難なく単体になります。

 

これがHPDタンノイの最大の特徴で、現代の高級TANNOYのユニットにもない利点です。

 

こうして外されたコーン紙は、まずエッジの張換えをする事になります。

 

エッジ交換にも、いくつかのパターンがあり、それは次回にいたします。

 

TANNOY HPDについて、その1

TANNOYスピーカーとの付合いは長く、50年近くになります。

TANNOYのスピーカーユニットは、日本の気候には適応力がなく、大昔の物である事から程度の良い物はかなり少なくなって来ていると思います。

 

TANNOYのスピーカーユニットは、ご承知の通りデュアルコンセントリックと言う同軸構造で、ウーハーの中心からツイーターの音が出るホーン構造が特徴です。

 

このホーンーの金属部分が錆びやすく、程度が悪化すると使用に適さなくなります。

ちなみに、通常では画像にしない、私のユニットで何とかスマホで撮ったのがこれです。


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ウーハーのダストカバー越しで、薄くて見にくいですが、中心にたくさん穴の空いている部分が、ツイーターのイコライザーです。

 

現在の製品で極めて高価になったアルニコマグネット使用のユニットは、錆に対して改善されているようですが、20世紀で一番量産されたHPDシリーズでは、性能が優秀であるにも関わらず、程度の良い物が少ないのは残念な事です。

 

いきなり、あまり一般的でない内容から、TANNOYの話を進めていきます。

今回はここで、一旦終わりにします。

 

次回からは、HPDユニットのメンテナンスを紹介したいと思います。

300Bシングルアンプの難しさ、その8

300Bシリーズも、これが最後です。

残る最後は特に問題のない信号回路です。

私の作ったWE300Bシングルアンプは、いくつもの製作段階があり、初期はタムラの段間トランス、出力トランス、パワートランスでかためた壮大なものでしたが、アンプの細かいチューニングをするには、余りにも重たく、その割には性能が良くありませんでした。

技術レベルが低かったのかも知れません。

 

初段真空管も、最初は5極管の6267で次に12AX7のパラ接続、そして最後に12AU7のパラ接続でした。

音質は12AX7のパラが好みでしたが、増幅率の高い初段管は300Bとの歪み打消しに対して、バイアス抵抗つまりカソード抵抗値の許容変動幅が少なく、難しい一面がありました。

 

12AU7のパラに決めてからも、トランス結合にしたりして、これ以上はあるまい、と思うレベルへの挑戦でしたが、結局現在のアンプに落ち着きました。

これが、30年程前の話です。

 

スピーカーがタンノイですから、QUADの405アンプの音と比較しながらの試行錯誤でした。(音質を似せるという事ではないです)

 

CDプレーヤーも幾つも買い集めましたが、今ではマランツのCD34とphilipsのLHH500だけしか残っていません。

 

耳は一人分ですから、よくよく考えると、アンプやスピーカー等の機材の数を増やしても意味がないのですが、それでも比較して聴き比べるのは楽しいものです。

 

話をアンプの回路に戻します。

真空管アンプでは、一番音質の良い抵抗器は私個人的には、カーボンソリッド抵抗だと思います。

殆どをソリッドにして、一部ホーローとかセメント、あるいは金属被膜抵抗器にしました。

音質に影響の出る初段のカソードパスコンは銀タンタルコンデンサー、カップリングコンデンサーはオイルコンデンサーが一番良かったと思います。

また、電解コンデンサーにはすべて1/100位のオイルコンデンサーをパラに付けてあります。

そんな訳で、製作したアンプの内部は整然とした配線は無理でした。

 

時々、ネットの画像で部品数が少なく、整然と美しく配線されたアンプの内部をお見受けいたしますが、よほど大きな筐体にしない限り、私には受け入れ難い目標です。

 

つい最近の自作品

何か作り上げる事は、楽しいことです。

つい先日、トランスによるインピーダンス変換器を製作しました。

 

ご存知の方も多いと思いますが、音源CDをそのままPCM非圧縮で、しかも超高速でHDDに転送出来る機器があります。

例えばnetjukeがそうですが、アンプはフルデジタル回路です。

音質は結構良いです。

しかし、もっと音が良くなるはずである。と思いました。

 

付属のスピーカーを使わず、JBLのL26スピーカーで聴く限り、音域は申し分ありませんが、音質はややおとなしく、これでも良いと言えば良いですが、大昔のCDプレーヤーをたくさん聴いてきた耳は欲が出ます。

 

ところが一部の機種を除きアナログ出力端子がなく、netjukeはBTL回路でスピーカー端子に直流電圧がかかっていて、スピーカー端子からRCAピンアナログ出力は取り出せません。(アナログ出力端子がある物もあるが、音質はそれなり)

 

そこで登場するのが、western electric製のインプットトランスを使った、絶縁インピーダンス変換器です。


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出来上がった作品はこんな物です。

ハンドニブラとか言う金属切断道具を使い、椅子に座ったまま、使い古しのアルミケースを切取りました。

残った物はこんな部分です。


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電気回路ですが、このトランスはパーマロイコア使用のインピーダンス600Ω:800Ωです。

まず、スピーカー端子からの出力を10Ωで受け、シリーズ抵抗に33Ωのソリッド抵抗を通し、1次側両端子にはんだ付けをしますが、1次側は決してグランドに落としてはなりません。

2次側は片側グランドに落とし560Ωの抵抗と0.001μFのスチロールコンデンサーを直列に入れ、RCA端子に接続して終わりです。

 

こうする事により、飛躍的に音が良くなる事をバラック配線状態で確認済みです。

(完成後、何度も抵抗値とコンデンサーの種類を変更しました。)

 

ちなみに、これに接続したアンプはsmslのsa36a(tripath IC)というデジタルアンプです。

 

興味のある方は、どうぞお試し下さい。

(2022.10.13 回路図修正)
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300Bシングルアンプの難しさ、その7

私の現在使用中のWE300Bシングルアンプの電源回路です。


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記憶に基づき手書きで画像にしました。

 

PTのAC電圧が350V X2ですから、DCピーク電圧はおよそ最大490Vとなります。

しかし、タイマーリレーRLスイッチにより電源オンから20秒間は15KΩを通してコンデンサーに緩やかにチャージされます。

そして、それまでの間に、まず300Bのフィラメントが、つぎに5RK16のヒーターが加熱完了しています。

 

500V500μFが490Vに達する前に5RK16から適正電圧が供給され始めます。

 

一旦、電源スイッチをオフにして、すぐにオンにしても、遅延リレーによりまた20秒遅れてB電圧が出力されます。

 

電源フィルターは500μFでかなり平滑化されていますが、5RK16の内部抵抗を通してWE300BにB電圧がかかりますので、膨大な蓄電量がいっきに流れる事はありません。

しかも、この5RK16にはACがかかっていませんから、この真空管も30年前から、交換した事はありません。

 

普通、箱型オイルコンデンサーはAC整流のすぐ後に接続される事が多いですが、出力トランスの直前に配置した方が音質が良く、そうしてあります。

ダイオードに対しては、2μFのフィルムコンデンサーが付けてあります。

 

説明不足の面もあるかも知れませんが、かなり長期間のトライアンドエラーで組上げてきました。

 

今回はここまでといたします。