壊れたWE300Bシングルアンプ

30年余まったく壊れなかった自慢のアンプが今朝突然に「ブツ」というやや大きな音をたてて音が消えた。

このアンプには保安用の速断ヒューズがいくつも要所要所に設置されているので、このヒューズが飛んでいるものと思っていた。


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中を開けて一個一個調べると、何一つ異常はない。

比較的浅い小型のシャーシに組んであるので、こうなると難儀である。

WE300Bのフィラメントはしっかり点灯している。

しかも両チャンネルとも音が出ないのだから、電源回路である事には間違いない。

 

一つ一つ電源回路をテスターで当たっていくと、初段の+Bが出ていない。ほのかに煙も出てきている。

半田付けを外してみてびっくり。


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made in USAの電解コンデンサーの短絡であった。

ここには350Vがかかっているが、まさかこれが短絡するとは思ってもいなかった。

とりあえず部品箱の中にあったニッケミの500V22μFに

交換して修理完了となった。

(その後、このポイントに350Vは高すぎと気付き250Vに変更。350Vは製作当初の真空管6267使用時で12AU7に変更後もここの電圧はそのままであった。)

 

古い機材の故障はやはりケミコンが最初である。

しかし、WE300Bはもちろんの事、電解コンデンサーが30年余りもよくもったものだ。

今後は他の電解コンデンサーも寿命を迎える事になるのか。それともユーザーの寿命が先か。。

marantz CD34のメンテナンス

CD34はだいたい1年に1回位、何らかのトラブルがある。1985年購入のこのCDプレーヤーのユーザーはこの修理に熟達しないと長期間愛用する事は出来ない。

 

今回は5年ぶりにトレイのベルト交換である。

5年も経てばベルトだけの入れ換えただけでは不十分である。
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ギアやプーリーを入念に掃除をする。シリコングリスが塗布してあれば、それらをよく拭き取り、新たに微量を塗布する。

ゴムベルトをかけ変え、元のようにビス固定すれば完了である。

このCDプレーヤーの最も多いトラブルが、トレイが最後のあと一歩手前で止まる事だ。

もちろんベルトが新品なら多少の負荷にも関係はしない。この現象はクランパでディスクを押さえる時、トレイの奥に設けられた勾配をローラが乗り上がる最後のトレイモータの最大の仕事である。

金属製のブラケットの中央部右にあるローラがそうである。ここにも若干のグリースを塗布して滑りを良くしておくと、この坂道をローラは駆け上がる事が出来る。

 

2台目の中国製アンプ

フリマで中国製6L6GCシングルアンプという物が出品されていた。

2年ほど使用して、その後押入で眠っていたらしい。

しかし、出品説明文に音出しはしたけど、ジャンク品とはっきり断りがある。

訳ありな事は容易に推察が出来る。しかし興味の思考は止まらない。

それで、思い切って値下げの依頼をしてみたらOKが出た。

送られてきてすぐにシャーシ内部を覗くと、すぐに分解するには少し惜しい気がした。
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取り敢えずケーブル類を接続をして音を出すと、濁った高域、詰まった低域、こりゃやっぱりジャンクだ。

 

 

しかし、この音の性質はかなり以前に経験済みである。そう、40年以上むかし、当時自作したVT52シングルアンプの時の音質傾向である。

 

あの時、そのためだけに作った出力トランスの消磁器がまだ実家にあるはずだと探しに行くと、外観は埃まみれ、金属は腐食、可変抵抗器は錆びついて動かない。

まず持ち帰り掃除と油を差してみるとなんとか使えそうだ。
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何ということはない、出力トランスの消磁器とは12V0.5Aほどの電源トランスに0→12V→0V→12V→0Vと電圧可変が出来るツールである。

早速、出力端子にこの可変電源装置を接続して電圧を上げたり下げたり数回して、最後はゼロVで終了する。

たったこれだけで出力トランスの磁化は解消されるのである。

出力トランスが帯磁する原因はよくわかっていない。

 

とにかくこのアンプは、一つも手を加える事なく正常音が再現できた。

分解のつもりがあっけなく修理完了で少しがっかりでもある。

300Bアンプは単純だが簡単ではない

中国NS社製の300BアンプのYouTubeを見てしまった。

最後に「これほどひどいアンプもない期待外れだった」と投稿者は語っている。

重い真空管アンプを、はるばる中国まで返品する訳にもいかないであろうから泣き寝入りと言ったところか。

やはり300Bアンプのハードルは高く、個人にしてもメーカーにしても相当の経験と蓄積された技術力が必要である。

https://youtu.be/eSk7PTaOfIA?si=a7IFTb87KB6oOYZR

部品のレイアウト、配線の引き回しやアースポイントを心得ていないと、相当苦労するものである。

何十年も製作してきて、いろいろな場面に突き当り深夜まで時間を忘れて取り組んで来た者のみぞ知るノウハウと言うものがある。

それを知り尽くした者には、ほぼ失敗はなく、もちろんノイズ等という現象にもあわないのである。

昔の人間、今は高齢者には若者にあるスピード感はないが、経験年数がある。

ましてや中国のガレージメーカーに、いきなり300Bのアンプの開発はちょっと荷が重いはずである。

佐久間駿氏のアンプ

大昔からある雑誌、MJ無線と実験は高齢者から若者までが愛読する今では唯一のオーディオ技術雑誌である。

我が家の書棚にも1970年代位からの発刊誌が、飛び飛びで数十冊はある。

 

その雑誌への掲載でにわかに脚光を浴び始めたオーディオマニアが佐久間駿氏である。単行本も何冊か発刊されている。

 

彼の製作集で共通しているのは測定結果が一切ないという事だ。

それと殆どがモノーラルアンプである。

さらにシャーシ内部はメーカー製品とは違い、美しい配線をしていない。

館山でレストランを営業しながら、コツコツとアンプを製作してMJ誌を通して有名になり、日本全国から訪問者が多かったと聞いている。

私も行きたかったが、行けずじまいでご当人がお亡くなりになってしまった。

 

ローサという英国製スピーカーを愛用して独特の音響を確立した人でもある。

殆どがタムラのトランスを使った全段トランス結合を特徴としている。

ローサのスピーカーは高域特性が飛切り伸びている訳ではないが、聴こえる帯域での高域のエネルギーが高い。

佐久間氏のアンプは、他のスピーカーではまともな音は出ない。と思う。

 

すべてのマニアが真似をしたいとも思わない、真似も出来ない、そういったアンプ創りで、支持者が多いアンプ製作家であった。

何と言っても現在、佐久間氏の所有するローサのスピーカーがすでに入手困難である。

 

きちんと整った真空管アンプが、必ずしも誰にでも好ましい音ではない代表例でもある。

 

周波数帯域について

殆どの楽器の基音と人間の声は40Hz~4000Hzに収まっている。

ただし高調波になるとさらに拡がり、高域は15kHzまで延びる。

それでも20kHzまで達する楽器はもう皆無に近い。無いとは言わないが聴こえない。

その高調波であるが、楽器個別にそれぞれ異なる。これが楽器の価値の違いでもある。

さらに再生装置となると、さらに個体差が現れる。我々がオーディオ機器として良い悪いの個人差はまずここにあるが、耳に入るには部屋の条件、耳の個体差等、これらを加味していくともうこれは無限に広がる。

したがって、最良と思われる条件でのオーディオ製品の評価はまず一般的ではない。

一般的でない音を聴いて、良い悪いと言ってもあまり意味がない。

しかしその意味のない評価を目にして、見た人は想像力を掻き立てられて、瞬時陶酔をする。

 

オーディオ機器の評価は、他人を陶酔させる文学の世界でもある。

 

今まで聴こえない音が聴ける、と言われても冒頭に言ったとおり、

殆どの楽器の基音と人間の声は40Hz~4000Hzに収まっているのである。聴こえない音の聴覚競争はバラエティ番組ででもしてもらいたい。

 

 

デジタルアンプの出力は「大は小を兼ねない」

まず人気のあるTDA7498Eの高調波歪特性である。
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次にtripathのTA2024の高調波歪特性。
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参考にWE300Bシングルアンプの高調波歪特性である。
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これらはあくまでも参考であり、音質の良し悪しの絶対値ではありません。

 

しかし、高出力のアンプが低出力での使用にはあまり好ましくないということは明白です。

もちろんスピーカーが小口径で能率が低い場合は、アンプの出力はゆうに10 倍以上は必要ですから、この出力対歪み率の見方は若干変わりますが、それでも低出力ほど歪み率が上がる事には変わりがありません。

 

くどいようですが、こうしたデータだけが音質を決めている訳ではありません。(特にWE300Bアンプは歪み成分が第2次高調波ですから、むしろ音質向上に貢献しています。)

 

しかし、私の愛用するJBLのL26での平均的出力1W未満程度での試聴では、明らかに高出力デジタルアンプの音質は好ましくありません。

 

どうも最近のオーディオシステム開発は技術だけが進歩して、ハイスペック化が進んでいますが、ビンテージオーディオ製品が消えない理由はそこらにありそうです。